引き続き、なぜAll Englishにこだわるのか?についての話。今回は第2言語習得の理論という観点から。
英語習得における、第2言語習得の認知プロセスについては、インプットからアウトプットまで以下の過程を経ていると言われています。
インプット → 気づき → 理解 → 内在化(インテイク)→ 統合 → アウトプット
よく「子供が小さいうちにたくさんのインプットをしないと!」「かけ流しが有効!」というようなことを耳にすることがあります。英語習得においてインプットは必要不可欠であり、それがなければもちろんアウトプットにはつながらないということは確かですが、「とにかく耳に英語を入れておけばよい」というものでもありません。本人にとって気づきがあり、かつ、それが本人にとって理解可能なインプットであってはじめて意味のあるものになります。
参考:英語漬け環境でも発話が出ないケース ①:インプット | バイリンガル育児のすすめ」
ameblo.jp
※こちらは同じくSUNNY BUNNY認定講師の講師仲間が書いているブログです。彼女の記事はどれも理論に基づき書かれているので、とても参考になるのでお薦めです!
子供たちはインプットを通じて得た知識を、最終的にアウトプットをしながら自分のものとして身に付けていきます。
「得た知識を使って単語を述べてみる」、「文章を述べてみる」 そのうえで、相手の反応を見て、「自分が言いたかったことが通じたか」「自分が言った内容が正しかったのか」あるいは「なぜ思ったようには通じなかったのか」というような仮説検証(※1)を経て、自ら修正、習得していきます。
村野井(2006)によると
「おぼれそうになって泳ぎ方を覚えるのと同じように、アウトプットして意思をなんとか伝えようとあがくことによって、第二言語能力が引き伸ばされることがありうる。」(村井 2006, p67)
と書かれています。
さらに、その「引き伸ばし」には2つのタイプがあること。1つは頭のどこかにはあったけれど、あまり使ってこなかった言知識がアウトプットしようとする中で活性化されて使えるようになること。そしてもう1つのタイプは、自分が持っている言語知識を組み合わせて、自分の中にはなかった文法を学習者が作り出し、それを仮説検証しながら自分のものにしていくということ。自ら考えた文がやや不完全な文であっても、学習者の中で何か違うのかなという感じが生まれれば、それも第二言語習得を促すことになるということも挙げられています。
こういった過程を経ることで、「定型文や単語を覚えただけの英語」ではなく、「自ら考えて発話した英語」を使えるようになっていきます。逆に言えば、この過程を経なければ、自分の言葉として自ら英語を使えるようにはなかなかならないとも言えます。
※1 仮説検証とは?
Merrill Swan氏は「理解可能なインプット」だけでなく、自ら外国語を使う機会があることが重要だとする「アウトプット仮説」を提唱(1985年)。アウトプット仮説の中の役割の1つが、自ら使った言葉の正確さを検証する「仮説検証作用(hypothesis-test function)」。
参考文献
村野井 仁(2006)「第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法」,大修館書店
和泉 伸一(2016) 「第2言語習得と習得から「言葉の学び」を考える」, アルク
その4に続きます。